日本人が英語ができない理由イメージ

日本人が英語ができないシンプルな理由とその解決策

Daisuke Sadamori

最終更新日: 2020.02.24

Do you speak English?

 

外国人に聞かれた日本人が、まじめに「No, I don’t.」と答える嘘のような本当の話があります。

 

英語を聞くとちょっとしたパニックになるんですね。きっと。

 

中学校と高校をあわせて少なくとも ”6年間” 英語を学んだのに、「まったく英語がわからない」という人も少なくないでしょう。

 

わからないといえば数学ができない人もかなりいますが、大人になって「微分・積分ができないからヤバい勉強しないと」という人って見たことも聞いたこともないですよね?

 

ところが、英語の話になると、「できるようになりたい」とか「話せるようになった方がよい」といった願望やある種のプレッシャーを感じるのがおもしろいところ。

 

では、なぜ日本人は英語ができないのでしょうか?

 

筆者が考える理由はシンプルに次の2つです。

 

  • 英語を学ぶ目的と手段があっていないから
  • 英語の習得に必要な標準学習時間に到達していないから

 

この2つは、筆者自身の留学を通した英語学習の経験と今まで出会った人たちの英語に対するアプローチを比較することでたどり着いた結論です。

 

この記事では、まず、「英語ができない」原因について詳細に解説し、次に解決策を提案します。

 

英語ができるってどういうこと?

まず英語ができない理由についての詳細を解説する前に、「英語ができる」レベルはどれくらいなのかについて明確にする必要があります。

 

どのレベルが妥当でしょうか?

 

今あなたの頭の中に浮かんだレベルが正解です。

 

つまり人によってどのレベルをさすかは異なっていて構わないということ。

 

ただ、この記事では次のように定義します。

 

英語を読む・書く・聞く・話すの4つすべてを日常生活で最低限困らない程度にできること

 

これは、日本語で置き換えれば小学校3年生のレベル

 

筆者の甥っ子・姪っ子と会話した時の感覚ですが、小学校2年生になると難しい言葉は分からなくても、簡単な言葉で言い換えてあげれば大抵のことについて意思疎通が可能です。

 

なぜ1年生ではダメなのかというと、別の言葉で表現してもその言葉もわからないため無限のループにおちいるから。

 

また、話す・聞くだけなら2年生程度でも十分ですが、読み・書きを加えると3年生ぐらいがちょうどよい習熟度でしょう。

 

英語のできる・できないの境目がだいたい分かったところで、冒頭であげた2つの理由について詳しく見ていきます。

 

英語を学ぶ目的と手段があっていない

外国語を学ぶときは目的をきちんと定めた上で、その目的に対して最適な学習方法を選ばなければならないということです。

 

抽象的で少し分かりづらいかもしれません。

 

筆者の後輩の太郎君の例を使って説明します。

 

20歳の太郎くんは自然写真が好きなので、世界最大の国立公園があるアメリカに旅行にいきたいと思っています。でも中高の英語の成績は散々だったので、英語を話さなければならないアメリカに行くのが少し不安です。

 

でもどうしても、アメリカで写真を撮影したいので、英語を学ぶ決心をしました。

 

ではここで問題ですが、太郎くんの目的はなんでしょうか

 

多くの人が答えるのは、「英語ができるようになる」です。

 

しかし、こう答えた時点で英語が一生できないパターンにハマります。

 

中高レベルの英語もできないまま大人になった人が本当の意味で英語ができるようになる可能性はないからです。断言できます。

 

少なくともラクして英語を習得したい人には無理です。

 

ウェブで「1ヶ月で英語ができるようになる」のような広告が流行るぐらいなので、ラクしたいという気持ちはみんな共通ということでしょう。

 

自然写真を撮ることを目的としている太郎くんも、例にもれず英語を学ぶことに時間をかけたくありません。むしろ最小限に抑えたいくらいです。

 

では太郎くんはどうすればよいでしょうか?

 

目的を「英語ができるようになる」から絞り込んで「旅行で困らない程度に英語を話せるようになる」のようにすればいいんです。

 

旅行で困らない程度の英語であれば、かなり利用シーンが限定されます。覚えなければならないのは、空港、ホテル、レストランで使いそうな単語だけ

 

英語を体系的に学ぶ必要がないので、文法の勉強もいりません。必要なフレーズの丸暗記で十分です。

 

間違っても大学受験用の単語帳を持ち出して、「electromagnetic field」や「enigmatic」のような単語を暗記してはいけません。旅行では絶対に使わないので。

 

また、リスニングも習得に時間がかかるので基本的に必要なし。ただ、相手の言っていることがわからないと困るので、「子供に話すようにもう一度ゆっくり言ってください」と「ここに書いてください」のフレーズを暗記すればよいでしょう。

 

ここまで読むと分かると思いますが、この勉強方法は日本の中高の勉強とは180度違います。なぜなら、中高の英語教育は旅行で英語を話すのを目的としていないからです。

 

目的が違うので、当然6年勉強しようが、10年勉強しようがいつまで経っても英語が話せるようになりません。

 

現在の教科書がどのようになっているかは知りませんが、筆者は中学で「This is a pen.」という例文を学びました。

 

当時はあまり深く考えませんでしたが、まったく使えない例文ですよね。

 

「これはペンです。」ってどんなときに使うんでしょうか?

 

宇宙人との対話を想定しているならわかりますが、日常ではありえない会話です。もちろん文が単純なので、1つの文を形作る要素(SVO)を学ぶのには最適ですが。

 

以上から、英語を学ぶときには、目的を明確にし、それにあった勉強法を考える必要があるわけです。目的が旅行などで英語を話すことであれば、学校での勉強とは目的が異なるので別の勉強方法を選択しましょう。

 

英語の学習時間がたりない

世間では、「日本人は6年も英語を勉強するのになぜ英語ができない?」という話題がよくあがりますよね。

 

当然の疑問です。

 

6年あれば高卒の子供がりっぱな医者になる期間ですから。

 

すでに解説した「目的と手段が一致していない」というのも大きな理由ですが、もう一つの理由は学習時間です。

 

そもそも、日本人が英語を習得するのに6年は十分な時間なのでしょうか?

 

また、6年間勉強すると言っても、誰も一日のすべてを英語の勉強に費やす人はいませんよね。勉強しかしない受験生でさえ、寝る時間があるので実質の勉強時間は半日にも満たないはずです。

 

では、現実的に考えて、学生は6年間でどれくらい英語を勉強しているのか計算してみましょう。

 

中高6年間の英語の学習時間の合計

文部科学省によれば、中高生が受ける英語の授業時間は表のとおりで、中学校と高校を合わせた英語の授業時間は787.5時間となっています。

 

3年間の授業単位時間(50分) 1時間換算
中学校(週4回) 140 x 3 = 420 350
高校(週5回) 175 x 3 = 525 437.5

 

1日8時間フルタイムで勉強したとすると、たったの3ヵ月と1週間程度

 

ぜんぜん勉強していないですね。

 

ただ、生徒はもちろん宿題や復習もたまにはやるでしょうから、その分も考慮して計算しなおしてみましょう。

 

学校は年間52週のうち35週を基準とするので、計算結果は次のようになります。

 

授業外の学習の頻度(1回あたり1時間) 6年間の授業を含む総学習時間
週に1回は必ず復習した場合 997.5
週に2回は必ず復習した場合 1,207.5
平日は毎日復習した場合 1,837.5

 

みなさんは中高生のころどれくらい宿題や復習に時間をかけていましたか。

 

筆者は、試験前以外はほとんど自主的な復習などをした記憶がありません。ただ、宿題はやっていたので、週に1回1時間は確実に勉強していたと思います。

 

ですから、平均的な学生は6年間で1200時間程度、モデル学生で1800時間というのは現実的な学習時間にかなり近い数字ではないでしょうか。

 

次はその学習時間が本当に十分であるのかを考えます。

 

英語を習得するのに必要な学習時間

直接的に英語を習得するのにかかる時間を計算するのは難しいですが、英語のネイティブスピーカーが日本語を学ぶ場合にかかる時間から推測可能です。

 

参考になるのは、アメリカの国務省管轄の外務職員局(Foreign Service Institute)が発表している外国語習得難易度ランキングです。

 

このランキングは政府職員(英語のネイティブスピーカー)が、外国語を使ってぎりぎり職務をこなせるレベルに到達するまでにかかる時間を5段階に分けた次のような表です。

 

難易度ランク 必要学習時間 言語
カテゴリ1 23-24週(575-600授業時間) オランダ語、フランス語など
カテゴリ2 30週(750授業時間) ドイツ語
カテゴリ3 36週(900授業時間) インドネシア語、マレー語など
カテゴリ4 44週(1100授業時間) ロシア語、タイ語など
カテゴリ5 88週(2200授業時間) 日本語*、アラビア語、中国語など

 

日本語は、このランキングで最難関とされるカテゴリ5に分類され、さらに*(アスタリスク)付きの超難関言語とされています。

 

つまり、アメリカの国家公務員が日本語を習得するには、少なくとも1年9ヶ月間、平日は毎日5時間の授業を受けて勉強しないといけないということ。

 

むちゃくちゃハードです。

 

カテゴリ1の言葉を見ればわかりますが、英語に近い西ヨーロッパ言語がリストされています。当たり前のことですが、自国の言語と似ている外国語は簡単で、似ていない言葉は難しいわけです。

 

逆に言えば、日本人にとって英語は学習しづらい言語であり、習得には相当な時間がかかることが推測できます。

 

こう書くと、すぐに「漢字を学ばなくていい分英語はラクだ」と思った方もいると思います。

 

しかし、アメリカのエリート国家公務員が漢字を学ぶのと普通の日本人が英語を習得するのにどちらが時間を多く要するでしょうか?しかもアメリカ人は仕事で絶対学ばなければ行けない状況です。

 

筆者の感覚では、2,200時間でも少ないぐらいです。

 

実質的に、日本人が英語を習得するのに必要な時間は3,000時間ぐらいが妥当な数字だと考えています。

 

というのも、筆者がアメリカで出会った英語がほとんどできない留学生も、1年経つとそれなりにできるようになったからです。英語を使っている時間を1日8時間、365日で2,920時間という計算になります。

 

また、どちらの例でも、2年未満で2-3000時間という集中的な学習であることも重要です。同じ3,000時間でも6年間で学習すれば、同じ効果は望めません。期間が伸びれば伸びるほど、必要な総学習時間は増加します。

 

いずれにしても、普通の日本人が「英語ができる」というレベルに達するには中高の”6年間”の学習ではまったく足りないということです。

 

英語ができないときの解決策

現状をみても明らかですが、ほとんどの方は3,000時間の集中的な学習はには耐えられません。

 

金も時間もかかるのにリターンが曖昧だからです。

 

筆者としては、ほとんどの方ができないことをすすめても意味がないので、別の解決策を提案します。

 

英語は問題解決のツール

最善策は、ずばり「英語ができるようになる」のを諦めるです。

 

ふざけた回答だと思う方もいると思いますが、かなり本気です。

 

ただ、諦めると言っても、英語を使うことをやめるわけではありません

 

「英語ができること」を目的にする考えを改めて、「英語=問題解決の手段」と捉えなおすということです。

 

計算が苦手な人が家計簿をつけるとき、暗算の代りに、電卓かExcelを使うのを想像するとわかりやすいでしょう。

 

英語を問題解決の手段として考えると、解決方法の幅はかなり広がります。

 

例えば次のようなツールが無料で手に入ります。

 

  • 道路標識や紙の文章=>Google翻訳アプリ
  • 会話の翻訳=>Google Assistantの翻訳モード
  • Webの記事=>Google Chromeの翻訳機能

 

もちろんまだ100%の正確さは望めませんが、精度は日々恐ろしい速さで進化しています。テクノロジーを使えば、英語ができなくても「英語を使う」ことはできるんです。

 

いい世の中ですね。

 

翻訳ツールについて詳しく知りたい方は、以下の記事で紹介していますので参照ください。

 

Google翻訳アプリについては、「iPhone ユーザー必須のGoogleアプリ」。

 

Google Assistantの翻訳モードについては、テック・トレンドの「Googleの翻訳こんにゃく..」の記事がおすすめ。

 

それでも英語を習得したい

では、どうしても英語を習得したい人は我慢して3,000時間勉強するしかないのでしょうか?

 

答えはYESでもNOでもあります。

 

学習時間を3,000から500時間に減らすことはできませんが、気分的に楽にすることは可能です。

 

例えば、英単語帳を丸暗記するのと、使えるフレーズを対話の中で覚えるのはどっちかラクですか?

 

単語帳の丸暗記のほうが効率はよいですが、すごい退屈。毎日やるのは苦痛ですよね。

 

そういうときは、スマホの英語学習アプリがおすすめ。色々なアプリがでていますが、「Duolingo」が1番有名です。

 

Duolingoのおすすめの点は、話す・聞くという学校では学びづらい部分のスキルを自分のペースでやれること。難易度が低いのである程度英語ができる人にはやさしすぎるのが難点ですが、15分程度の短時間の学習でも毎日続ければ成果を感じやすいデザインになっています。

 

学習方法としては、Duolingoを使って英語学習が習慣化した後で、もっと知りたいと思った部分を他の参考書等で補うのがよいでしょう。

 

英語ができない原因と解決法のまとめ

日本人がいつまでたっても英語ができるようにならない原因について解説しました。

 

まず、英語の学習目的とその学習方法が一致していないため学習が非効率的になっていることが原因です。

 

筆者の家族や友人を含め多くの日本人は、英語を話す・聞くというスキルを習得したいと思っているのに対し、学校で学ぶ英語は試験で点数をつけるために最適化されています

 

点数をつけるのに簡単なのは文法や単語の穴埋めですが、現実の会話は穴埋めとはほど遠いですよね。また、文章を読むときには抽象的な難しい単語も必要ですが、会話を論文調のかたい言葉を使って話す人はいません

 

ですから、あなた個人の英語を学ぶ目的が国が定めた学習指導要領で定めた目的と異なれば、望むような結果が得られないのはあたりまえのことなんです。

 

もう一つの原因は、単純に学習時間がたりないということ。英語は日本語とは対極にある言葉であるため習得には膨大な時間がかかります

 

1-2年の間に3,000時間を英語の学習に費やすのは並大抵のことではありません。正直、めんどうなのでほとんどの人は途中で諦めます。

 

ただ、英語を学ぶ目的を明確にすることで、3,000時間の学習時間を大幅に減らすことは可能です。

 

例えば、旅行であれば、聞くことよりも自分の言いたいことを一方的に伝えることに集中することが効果的。分からないときは何度も聞き返せばよいわけですからね。

 

逆に、仕事で文章を読むのが主な目的であれば、ひたすら単語を暗記すればよいです。発音を覚えるのもめんどうなら省いてもかまいません。単語も一般的なものは無視して専門用語を先に覚えるのがおすすめ。

 

ポイントは、「英語ができる=かっこいい」というイメージを捨てること

 

かっこつけようとすると、ネイティブぽく発音しようだとか、どんなシーンでも英語を使いこなせるといった日本国内ではほとんど使うことのないスキルの習得に時間を費やす羽目になります。

 

「英語=目的を達成するために便利な手段」と捉えなおしましょう

 

そうすることで、信じられないほど効率的に学習がすすめられること間違いなしです。「英語ができない」ことで悩んだ時の参考にしてください。

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Daisuke Sadamori

デザイン・テクノロジー・データの3つが大好きなデジタルコンサルタント。 日々の生活や仕事の中で、この3つをどうやってうまく使っていくかを常に模索しています。

ついでに料理は作るのも食べるのも好き。最近のお気に入りは、低温調理と常備菜。ちなみにエスプレッソマシンは全自動。

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