日本を含む16カ国のウェブサイトのアクセスランキング・トップ25を分析して、世界と日本のインターネット利用状況について調べました。
より深く理解するために、以下の4つのシリーズに分け、それぞれの視点から世界のインターネットの状況について分析しています。
- ウェブサイトのカテゴリごとの分析
- 国ごとの特徴の分析
- 2-1.日本編(この記事)
- 2-2.アメリカ編
- 会社・資本ごとの分析
- 2015年からの変化の分析
この記事は日本を世界各国と比較した場合の日本の特徴や傾向に重点をおいて分析した結果を紹介します。
調査した国
経済レベルと人口及び地域を考慮して以下の16カ国をアレクサ・インターネットのランキングを使って調査しました。
アジア&オセアニア
- 日本
- 中国
- インドネシア
- インド
- オーストラリア
中東&アフリカ
- サウジアラビア
- 南アフリカ
ヨーロッパ
- イギリス
- フランス
- ドイツ
- オランダ
- スウェーデン
- ロシア
北南米
- カナダ
- アメリカ
- ブラジル
概要
1.日本のアクセスランキングトップ5
日本国内でアクセス数の1番多かったサイトは以下の5つのサイトでした。
- Google.com
- YouTube.com
- Yahoo.co.jp
- Amazon.co.jp
- Google.co.jp
GoogleとYoutubeは世界中でトップ2をほぼ独占しているので、あまり驚きはないと思います。ただ、アマゾンがここまでランクを上げてきているというのは興味深いところです。最近アメリカでは、Google検索せずに最初にAmazonで買いたいものを検索して買うという人が増えてきているそうなので、日本でもその傾向が増えていくかもしれません。
2.ランクインしたカテゴリ
今回トップ25にランクインしたサイトは次の10カテゴリからでした。カテゴリはランクインした順に並んでいるので、日本人がオンラインでしていることのトップ10のようなものだとも考えられます。みなさんはどのカテゴリのサイトを1番よく使いますか。
- 検索エンジン
- 動画
- ポータルサイト
- Eコマース
- 情報データベース
- SNS
- メール・メッセージ
- ブログ
- ブランド
- 価格比較サイト
3.自国率
自国率は、日本独自のサイトがトップ25を占める割合です。
日本の独自率はわずか20%でした。この自国率の低さは、アメリカのサイトをそのまま使う傾向のあるイギリスと同率で16カ国中最下位です。日本の独自のサイトは次の5つのサイトです。ちなみにアメリカ率とも言うべきアメリカ生まれのサイトの日本のトップ25の占有率は56%=14サイトでした。
- Yahoo Japan*
- 楽天
- ニコニコ動画
- Fc2
- 価格コム
*Yahoo.co.jpは元々はアメリカのサイトですが、本家とは全く違う路線であることと、SoftBankの100%子会社になったこともあり日本独自のサイトとしてカウントしています。
あまりにも独自路線を進んでガラパゴス化するのもよくないのですが、80%を他国のサイトに頼るというのは少しさみしいところです。
分析結果
ここからは、より詳しく分析の結果を紹介して行きます。
1.日本の中国化
概要でふれた自国率の低さは、アメリカ生まれのサイトの躍進のみが理由ではありません。もう一つの理由は、日本独自のサイトの数を超える以下の6つの中国系のサイトのランクインです。
- Tmall.com (Login.tmall.comもランクイン)
- Taobao.com
- JD.com
- QQ.com
- 360.cn
どのサイトも中国では非常に人気のあるサイトなのですが、どれか1つでも見たことのあるサイトはありますか?ちなみに最初の3つが、Eコマースサイト、QQ.comがメッセージ、360cnが検索サイトとなっています。
筆者は360.cn以外については知っていましたが、普通の日本人がこれらのサイトを日常的に使うことはあり得るでしょうか。正直、集計間違えを1番に疑いましたが、すぐに思い直しました。ここ数年外国からの旅行者が急激に増えていることを思い出したからです。
政府の統計によると、2018年に日本を訪れた中国系の旅行者(中国、台湾、香港)は1500万人以上となっています。月あたりにすれば、200万にも満たない数字ですが、旅行者は仕事中の日本人よりも高頻度で、インターネットにアクセスするのではないでしょうか。
どこまで彼らのアクセスがランキングに影響しているのかは定かではありませんが、可能性は高いでしょう。いずれにしても、中国系のサイトの利用者が増えていることは間違いありません。
2.買い物が大大大好き?
トップ25にEコマースサイトが8つもランクインし、他の15カ国を圧倒しました。くわえて、オンラインショッピングに深く関連するカテゴリである「ブランド」と「値段比較サイト」2つからもランクインしています。
中国系のサイトを除くオンラインショッピング関連サイトは次のとおりです。
- アマゾン(co.jp と.comの2つ)
- 楽天
- Ebay
- Apple(ブランド)
- 価格コム(価格比較サイト)
価格比較サイトのトップ25のランクインは日本のみで、Eコマースサイトの統合が進んでいないことを示しています。他国では、アマゾンとeBayの2つのサイトの人気が圧倒的であるため、比較サイトは必要がないということです。
また、数年前にアマゾンが楽天を抜いてオンラインショッピングで日本市場トップに立ったというニュースがありましが、実際Amazon.co.jpが楽天よりも上位にランクインしています。
3.ポータル=ニュースは日本だけ
これはカテゴリ編でも紹介しましたが、日本以外の国では、ポータルサイト以外にニュース専門のメディアのサイトがランクインしています。
例えば、イギリスのBBC、アメリカのCNNなどです。
日本の主要メディアであるNHKや朝日・読売などのメディアがなぜランクインしないのでしょうか。理由を考えてみましょう。
まず、1つには新聞社などの既存メディアの電子化及びビジネスモデルの変更が遅れていることが考えられます。アメリカ及びイギリスの新聞社は比較的早い段階で記事のオンライン公開を開始して、紙媒体からオンライン購読と広告への収入モデルの変更を積極的に進めてきました。日本の新聞社は公開に踏み切るのが遅れたうえ、記事の公開が限定的なためオンラインでの存在感を示せずにいます。
もう1つにはポータルサイトがニュース専門サイトの役割も担っているということがあります。様々なメディアが限定公開したニュース等を寄せ集めることで、専門サイトと同等以上の量のニュースを提供できるポータルサイトが複数あります。多くのユーザーにとっては既存メディアも自前のサイトをゼロから構築するよりも、すでに人気のポータルサイトと契約したほうが手軽に収益を上げる方法だったことも考えられます。
4.オンラインバンキングは人気不調?
金融関連のカテゴリのサイトがトップ50位まで対象を広げてもランクインしなかったのは、日本、イギリス、インドネシアの3カ国だけでした。
日本は金融機関の統合はかなり進んでいて、3メガバンク+ゆうちょ銀行の4つどれかを利用している方が大多数だと思います。その点を考慮すると金融関連のサイトのランクインがないのは、オンラインバンキングがまだ浸透していないからだと推測されます。この調子では、政府がすすめるキャッシュレス化も相当時間がかかりそうです。
ちなみに、カテゴリの名前を金融関連としているのは、銀行以外にもPaypalやAlipayなどの支払いサイトも含んでいるためです。QRコードでの支払いが浸透している中国ではAlipayがランクインしています。
5.Yahooはまだまだ人気
アメリカを含め他国では正直ぱっとしないYahooですが、日本での人気は今だに絶大です。Yahoo.co.jpが3位にランクインした他、16位にYahoo.comがランクインしています。
Yahoo.comは16カ国中14カ国でランクインしていますが、同じYahooが2つランクインしているのは日本のみとなっています。
6.InstagramよりもTwitterが人気
最近は、ツイッター(Twitter)よりもインスタ(Instagram)という言葉をよく耳にしますが、日本のアクセスランキングではTwitterが上です。SNSカテゴリの中で1番がFacebookであるのは他国も日本と同じですが、2番人気はInstagramとTwitterで拮抗しています。
以外かもしれませんが、Twitterのユーザは本国アメリカを除けば日本のユーザが圧倒的に大多数です。実際Twitterの最高ランクは、日本とアメリカで同率17位となっています。
7.ブログサイトの1番人気は..
今回ブログサイトでトップ25にランクインしたのは、Fc2.comのみでした。他国では、軒並みGoogle所有のBlogspot.comがランクインしています。
ブログのカテゴリで、他国と異なるプラットフォームがランクインする理由は外国のプラットフォームの日本語化の遅れが原因だと推測されます。特にブログは、検索エンジンやSNSなどと違い技術的な難易度が低いこともあり、日本でも和製のサイトが早い段階で導入されたのでしょう。
ちなみに、トップ50まで範囲を広げるとブログカテゴリでは、アメブロが2位でした。
まとめ
今年度は、日本の独自サイトのトップ25の占有率(自国率)がわずか20%になったこともあり、日本人が使うサイトの違いによる世界との違いは減少しました。しかし、英語圏で自国率が低い国と違い、日本の自国率の低さは中国のサイトがランクインしたことが最大の理由です。
世界と同じサイトを使っている場合でも、他国では人気を落としてきているYahooやTwitterの人気が高いのは日本の特徴の1つとなっています。もう一つの大きな特徴は、ニュース専門サイトの欠落です。ポータルサイトのYahooの人気が非常に高いことがその原因の一部となっています。
また、Eコマースサイトのランクイン数が多かったのも印象的でした。Eコマースサイトが人気を集めているのに、金融関連のサイトがランクインしない理由は、代金引換など他国にはみられない方法が利用されているからかもしれません。
みなさんはどの点が1番気になりましたか。疑問点などあれば、コメント欄へどうぞ。