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スタウォーズもびっくりのEコマースとソフトウェアの巨人の戦い、そしてもう1つ

Daisuke Sadamori

最終更新日: 2020.03.08

インスタントラーメンを待っている間に読み終わる、重要なテック・トレンド。見逃してしまったあなたにお届けします。

 

今週のピックアップ

 

Amazon vs マイクロソフト:スタウォーズもびっくりの競争

14年前にAmazonが最初に始めたと言われるクラウドコンピューティング業界は、アメリカの調査会社のGartnerによると今年2020年には約30兆円規模にまで成長すると予想されています。

 

現状は、業界トップのAmazonをマイクロソフトがものすごい早さで追いかけているという状況です。

 

このテックトレンドで特に取り上げたいのは、アメリカの国防省が公募していたクラウドコンピューティング契約、別名「JEDI契約」です。

 

JEDI契約とは?

JEDIは The Joint Enterprise Defense Infrastructure の略で読み方はスターウォーズの正義の味方と同じジェダイです。ライフセーバーの代わりにクラウドコンピューティングを使って国を守るという意味を込めたちょっとお茶目な名前ですね。

 

JEDI契約は100億ドル(約1兆円)の契約で、業界トップのAmazonが契約を勝ち取ると思われていたところ、業界2位のマイクロソフトが競り勝ったことで2019年末に大きな話題になりました。

 

というのも、その後、契約に関して大統領が口を挟んだことで契約を勝ち取れなかったとして、Amazonが政府を訴えていたからです。日本的には御上を訴えるなどありえないことですが、アメリカは訴訟国家ですから政府も当然対象になります。

 

JEDI契約をめぐる裁判の行方

アメリカ時間の2月13日、連邦裁判所が、マイクロソフトに対し判決が確定するまで契約の業務を停止するように命令しました。

 

あくまでも連邦裁判所がAmazonの言い分を聞いてくれるというだけですが、Amazonにとっては大きな一歩でしょう。

 

100億ドルが巨額な契約であることはもちろんですが、アメリカの国防省の契約を勝ち取れば、クラウドコンピューティング分野で企業としての信頼度が高まることは間違いなしです。日本政府のクラウドコンピューティングを受け持つ可能性もあるかもしれません。

 

そういった意味でこの裁判の判決は、今後のクラウドコンピューティング業界を占う重要なものとなるでしょう。

 

テクノロジー業界の多様性への挑戦

2020年1月末、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムで、アメリカの投資銀行、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)がベンチャー企業の株式公開(IPO)の条件に取締役会の多様性を加える方針を発表しました。

 

取締役会の多様性とIPO?

 

「テクノロジーのトレンドと関係ないでしょ」と思った方もいるかもしれません。

 

当然の疑問ですね。

 

少しだけ現在のアメリカのテクノロジー業界を取り巻く状況を知るとこの発表の重要性は明確になると思います。

 

アメリカにおける多様性

まずアメリカでは「多様性」という言葉は、日本の「格差」と同じかそれ以上にメディアや学校教育で取り上げられる超ホットなトピックなんです。

 

日本で男女格差を積極的になくそうとする企業が英雄視されるように、アメリカでは多様性を積極的に取り入れる姿勢は非常に高く評価されます

 

ただ、多様性はマーケティングのためだけに取ってつけた言葉ではありません。

 

現実問題として、世界中の人に使いやすい製品やサービスを提供するには、多様性のあるチームが協力し合うことが必要不可欠だからです。

 

具体的な例を上げてみましょう。

 

多様性の欠如がテクノロジーに与える影響

Googleが数年前にサービスの提供を始めたGoogleフォトという写真・動画の無制限バックアップツール。最高に便利なのですが、開始当初はあってはならないテクニカルエラーが起こりました。

 

黒人が写っている写真にゴリラというタグを自動でつけてしまったんです。

 

なぜこのようなことが起きたかというと、黒人のイメージを判定するための機械学習が足りなかったから。機械自体が差別的な意図を持つことはありませんが、人工知能をトレーニングするためのデータに偏りがあれば意図しない結果につながるということです。

 

もちろん技術的な方法でデータの偏りを除くことは可能かもしれませんが、もっと単純に開発チームに多様性があれば気付けることも多いでしょう。

 

テクノロジー業界の多様性の現状と今後

Googleを含むアメリカの優良テクノロジー企業は、多様性を高めるための努力を続けていますが、現状は白人とアジア人男性のオンパレード。一般の目にさらされないテクノロジーの新興企業は、特に白人男性100%が占めることが多くなっています。

 

そういったアメリカの状況を踏まえて、今回ゴールドマン・サックスはIPOの条件として「ストレートの白人男性以外を含む」を求めていくこと発表したわけです。ゴールドマン・サックスは株式公開の業務を行う世界のトップ企業の1つですから、今後は他の投資銀行も同じような条件を出すことが期待されています。

 

今後のテクノロジー業界の「多様性」を取り巻く状況がどう変わっていくのかが楽しみですね。

以上今週のテックトレンドでした。

それではまた来週お楽しみに。

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Daisuke Sadamori

デザイン・テクノロジー・データの3つが大好きなデジタルコンサルタント。 日々の生活や仕事の中で、この3つをどうやってうまく使っていくかを常に模索しています。

ついでに料理は作るのも食べるのも好き。最近のお気に入りは、低温調理と常備菜。ちなみにエスプレッソマシンは全自動。

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