最近は電車に乗ってもカフェにいっても、スマートフォンを使っていない人を探す方が難しくなってきました。時代は、確実にパソコンからスマートフォンやタブレットなどの小さいタッチスクリーン機器に移ってきています。
実際、筆者も「パソコン歴20年の筆者がパソコンよりも iPad をすすめる理由」で解説したとおり、大多数の人にはパソコンよりもタブレットをすすめています。しかし、子供、特に中学生以下の子供に関しては、タブレットやスマートフォンではなくパソコンが絶対におすすめです。むしろ、タブレットやスマートフォンは高校生までさわらせないぐらいの気持ちでいたほうがよいと思っているぐらいです。
理由は単純に次の3つだけです。
- 将来かならず使う
- デジタルクリエイターの道がひらける
- 発見がいっぱいある
それでは、筆者があえて子供にはパソコンをすすめる上記3つの理由について詳しくみていきましょう。
1.将来かならず使う
ご存知の方も多いと思いますが、2020年に小学校でもプログラミングが必修化されます。これは簡単に言えば、国がすべての国民にとってデジタルスキルが必要だと認めたということです。
現在、公的な書類の作成や申請のデジタル化の多くは、あくまでも申請者のオプションとなっています。しかし、大企業による納税の電子申告の義務化にみられるように、今後は国民の生活のデジタル化・オンライン化がますます加速していくことは間違いありません。
そうなれば、今まで仕事でパソコンを使うことはないから大丈夫だと思っていた方も、会社の方針で作業報告や交通費申請がデジタル化されることもありえるわけです。
もちろん、デジタル化が進んでもスマートフォンを使えばよいと思う方も多いと思います。
しかし、使わなければならないサイトがスマートフォンに対応していない場合は?セキュリティの問題で接続できる端末がパソコンに限定されている場合は?
いくつでもこのような例をあげられます。
いくらスマートフォンなどが主流になってきているとはいえ、やはり職場や学校などパソコンを使わないといけない場面があります。
だれでもすぐに使えるスマートフォンと違いパソコンは、学習コスト(使えるようになるまでにかかる時間)が非常に高いツールです。大人はデートや飲み会、仕事や家事など非常に忙しいので、子供のうちに遊びの一環で使い方をマスターしておけばとっても楽ですよね。
職業にかかわらず生活の中でパソコンを使う確率は年々増えますし、学校での必修化を考えれば、子供にこそパソコンを使わせるべきでしょう。
2.デジタルクリエイターの道がひらける
最近の子供のなりたい職業の1つにユーチューバーが入っているそうです。デジタルコンテンツを消費しているときは、見えない部分にかかる時間や技術的なむずかしさを感じ取ることができないため、ラクで楽しそうというイメージだけが先行するからかもしれません。
実際、YouTubeを見ているとこんなの誰でもできると思うような動画をよく見ると思います。しかし、そんな動画でさえも撮影とは別に動画編集におどろくほど長い時間とたくさんのデジタル知識・スキルが集約されているのです。
大人になってから動画編集などのデジタルスキルをみにつけることも、徹夜して作業することも不可能ではありません。しかし現実的には大人でそんな時間がある人はほとんどいないでしょう。そう考えれば、時間のある子供のときにデジタルコンテンツを作成する経験をしておく方がよいのです。
もちろんスマートフォンなどでもデジタルコンテンツを作ることができることは否定しません。しかし、スマートフォン用のオペレーティングシステム(OS)は、機能が限定されていることも多いだけでなく、作業効率がわるいです。また、操作性を重視しているためほとんどの作業が自動設定になっています。つまり、画面をタッチしてから結果が表示されるまでの間に何が起こっているのかがわかりづらいということです。
その点パソコンは、多機能で画面も大きいため作業効率は最高です。OSが原因でアプリケーションの機能が限定されることもないですし、自分の好きなようにいくらでも詳細の設定が可能です。そして一番良いのが、ウェブサイトなどのアプリケーションを参考に、プログラム上どのような処理をしているのか、のぞき見ることができることです。
また、画面が大きいというだけでなく、作業にあわせてキーボード、マウス、ペンなどを自由に選択できるという点も重要です。作業に適したツールを自分で考えて選ぶというのも、クリエイターにとって必要なスキルだからです。
3.発見がいっぱいある
YouTubeで動画を再生しているときに、キーボードの L を押すとどうなるかわかりますか?
この答えを瞬時に答えられる方はかなりのパソコンの上級者でしょう。または、筆者の小学校1年生の甥っ子のような子供です。
なぜ小学生の子供が大人の大半が知らないようなことを知っているかというと、彼がパソコンオタクだからではなく筆者のパソコンで遊んだことがあるからです。
彼をひざにのせてYouTubeで何かを見せていたとき、飽きてキーボードのキーを一つづつ押し始めたことがありました。そのときにたまたま、J、K、Lと押して画面が変わったことで、いわゆるショートカットキーがあることを自分で見つけたのです。その後YouTubeで使えるキーのローマ字をいくつか教えたので、今はYouTubeさえ開けば動画を自由にコントロールできるようにまでなっています。
ちなみにYouTubeでは、J、K、Lのキーは、巻戻し、停止・再生、早送りのショートカットが割り当てられています。
このような「発見」があった理由は、甥っ子がタブレットではなくパソコンをさわっていたからです。今回はYouTubeの話をしましたが、パソコンはどのソフトでも1つの作業に対して複数の方法が用意されているため、使えば使うほど発見があります。もしこれが、スマートフォンなどであれば、動画を再生するだけで終わっていたでしょう。スマートフォンはタッチ以外の使い方を意図して作られていないからです。
この発見は大人の我々には小さなことですが、子供には大きな発見です。まず親でも知らないことを自分で発見したこと。次にとりあえず試してみることで、結果が得られたことです。この経験があるかないかで、成長した時にデジタルツールへの関わり方がかなり変わってくることは間違いありません。
まとめ
筆者は、あえて子供には使いやすいスマートフォンやタブレットではなく、パソコンをすすめています。
理由は、まず将来的に、職業にかかわらずパソコンを使わなければいけない場面が増えるからです。プログラミングの必修化や大企業の電子申告義務化など、我々の生活のあらゆるところにデジタル化の波が押しよせています。デジタル化を避けることができないのであれば、学習コストが高いパソコンは、忙しくない子供のときにマスターするのが合理的です。
次に、パソコンは子供に人気のデジタルクリエイターへの道を開いてくれるということです。誰にでもできそうなデジタルコンテンツも長時間の編集やデジタルスキルを必要とします。時間に追われることがない子供時代に、パソコンを通して必要な知識やスキルを学ぶことがクリエイターの一歩です。
最後に、パソコンには使い方が限定されたスマートフォンなどにはない「発見」という学びも非常に重要です。単純にデジタルツールを使いこなせるようになることよりも、この発見から得られることのほうが大きいのではないでしょうか。自分で積極的にいろいろ探してみようという好奇心が育まれるからです。
次に、子供にデジタル機器を使わせるときに参考にしてみてください。きっとおもしろい発見があると思います。